体と環境に優しい黒糖の特徴
沖縄黒糖とは
沖縄黒糖の基本情報
「沖縄黒糖」の定義
沖縄黒砂糖協同組合は、沖縄黒糖を「さとうきびの搾り汁をそのまま煮沸濃縮し、加工しないで冷却~製造した純黒糖」と定義しています。沖縄黒糖のほとんどは、組合に所属する8つの製糖工場で生産されています。
製法 | さとうきびの搾り汁を濃縮し、加工せずに冷却し製造する。原料はさとうきび100% |
---|---|
産地 | 沖縄(主に8離島。伊平屋島、伊江島、粟国島、多良間島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島) |
特徴 | 島ごとに異なる豊かな風味と奥深い味わいが特長で、こだわりを持って選ばれることが多い。 |
収穫生産時期 | 12月~3月 |
加工糖・輸入糖との違い
粗糖や糖みつなどを混合したものは「加工黒糖(加工糖)」、中国、タイなどの海外産のものは「輸入黒糖(輸入糖)」と呼ばれ、純黒糖とは区別されます。
加工糖(再製糖・赤糖ともいう)の成分に黒糖は含まれていません。
黒糖といっても色々ある
黒糖(純黒糖)
表示例
名称 | 黒糖(または黒砂糖) |
---|---|
原材料名 | さとうきび(沖縄県産) |
さとうきびの搾り汁を煮詰めてそのまま固めた製品。
加工黒糖
表示例
名称 | 加工黒糖 |
---|---|
原材料名 | 黒糖(沖縄県製造)、粗糖、糖みつ |
黒糖に粗糖(原料糖/精製糖の原料となる分みつ糖)や糖みつなどを混合、加工した製品。
加工糖
表示例
名称 | 加工糖 |
---|---|
原材料名 | 粗糖(国内製造)、糖みつ |
粗糖(原料糖/精製糖の原料となる分みつ糖)や糖みつなどを混合した製品。
黒糖は使用されていない。
JAおきなわ黒糖の特長
産地の個性
直営の製糖工場
JAおきなわは、5つの島で黒糖をつくっています。気候や土壌、地形の違いによって味に違いがうまれます。使用用途によって産地をお選びいただけます。
味の特長
島によって、香りやフレーバーが異なります。好みや合わせる食材に応じて使い分けると美味しさが引き立ちます。
栄養成分
黒糖は無精製食品。他の糖類よりも高い栄養価を誇ります。
大切な栄養分はそのまま残します
無精製だからミネラルやカルシウムなど、さとうきびの成分がまるごと生きています。
出典:日本食品標準成分表(八訂)
100gあたりのポリフェノール量は赤ワイン以上
出典:広瀬ほか、高付加価値黒糖製造技術の開発及び黒糖成分の比較。
沖縄黒糖シンポジウム2007(2007年11月)表1より7種の平均値を計算
Fukushima Y et al. J Agric Food Chem 2009;57:1253-1259
豊富なカリウムで血圧ケア
カリウムの含有量は、きび糖の7倍、はちみつの17倍、上白糖の550倍。ナトリウムを排泄し、血圧を下げます。
毎日使うとその差は大きい
100gあたり | 黒砂糖 | きび砂糖 | はちみつ | 上白糖 |
---|---|---|---|---|
エネルギー(Kcal) | 352 | 396 | 329 | 391 |
たんぱく質(g) | 1.7 | 0 | 0.3 | 0 |
炭水化物(g) | 90.3 | 88.8 | 81.9 | 99.3 |
ナトリウム(mg) | 27 | 10-30 | 2 | 1 |
カリウム(mg) | 1100 | 142 | 65 | 2 |
カルシウム(mg) | 240 | 10-35 | 4 | 1 |
マグネシウム(mg) | 31 | 3-20 | 2 | Tr |
リン(mg) | 31 | 1.1 | 5 | Tr |
鉄(mg) | 4.7 | 0.15-0.45 | 0.2 | Tr |
亜鉛(mg) | 0.5 | 0 | 0.1 | 0 |
銅(mg) | 0.24 | 0.05-0.3 | 0.04 | 0.01 |
ビタミンB1(mg) | 0.05 | 記載無 | Tr | 0 |
ビタミンB2(mg) | 0.07 | 記載無 | 0.01 | 0 |
ビタミンB6(mg) | 0.72 | 記載無 | 0.02 | 0 |
ナイアシン(mg) | 0.8 | 記載無 | 0.3 | 0 |
パントテン酸(mg) | 1.39 | 記載無 | 0.12 | 0 |
ビオチン(mg) | 34.0 | 記載無 | 0.4 | 0.1 |
出典:日本食品標準成分表(八訂)
5つの成分で強調表示が可能
カリウム、カルシウム、鉄分、ビタミンB6、ビオチンの5成分で、「○○たっぷり」の強調表示が出来る栄養価の高い砂糖です。
機能性
血糖値上昇抑制
黒糖は、腸内で炭水化物やでんぷんを糖に分解する酵素の反応を阻害することが報告されています。その結果、糖の吸収が遅くなり、血糖値の上昇を緩やかにします。血糖値の急上昇は、眠気、だるさを引き起こし、糖尿病や認知症、ガンのリスクを高めます。
でんぷんや炭水化物は腸内で糖類分解酵素によってグルコースまで分解され体内に吸収されます。黒糖には糖類を分解する酵素を阻害する効果があると報告されています。その結果、糖類の吸収が阻害され、食後の過血糖を予防することが期待されます。この効果は黒糖中のポリフェノールによるものである可能性が示唆されています。
※前田他、沖縄県工業技術センター研究報告書,10,1-5(2008)
動脈硬化予防
黒糖や黒糖ポリフェノールを摂取することにより、血管内膜が厚くなるのが抑制され動脈硬化が予防されたことが日本ウズラの実験で報告されています。
高脂肪食は粥状動脈硬化を促進します。黒糖を食べていた日本ウズラは、白糖を食べていた日本ウズラよりも粥状動脈硬化になりにくく、白糖と黒糖ポリフェノールを一緒に食べても効果がありました。
和田,日本食品保蔵学会誌,37(1),17-27(2011)
抗う蝕性
黒糖から分離されたポリフェノールには虫歯菌に対する高い抗菌性があることが報告されています。
黒糖ポリフェノールの一種であるIsoorientin-7,3'-0-dimethyletherは、既報の抗う蝕物質と同等以上の抗菌性をもつと報告されています。
Takara et.al.J.Oleo Sci.,56(11),611-614(2007)
ストレス抑制効果
単純作業の繰返しで生じるストレスに対し黒糖を摂取するとストレスを和らげる効果が期待できます。ヒト臨床実験で、黒糖を食べた人はストレス負荷を感じる度合いが低い(血清中のストレスホルモン分泌が抑えられる)という結果も報告されています。
単純計算を続けることで、ストレスが付加されると言われていますが(内田クレペリン法)、黒糖を食べてから計算をすると、食べなかった時と比べてストレス度合が低かったことが、ヒト臨床実験で報告されています(自覚的疲労度を測定するVAS法)。
Takahashi et al., Food Preservation Science,43(3),123-132(2017)
美白効果
黒糖由来のポリフェノールやDDMPは、皮膚の内部でメラニンができるのを抑える作用があると報告されています。
チロシナーゼ(酵素)は、しみの元となるメラニンの合成で最初に働く酵素です。黒糖由来ポリフェノールやDDMP※は、既報の美肌効果物質と比べて、チロシナーゼ阻害活性が強いと報告されています。
※DDMP:23-dihydro-3,5-dihydroxy-6-methyl-4(H)-pyran-4one Takara et al.,Biosci.Biotechnol. Biochem.,71(1),183-191(2007)
免疫の活性化効果
さとうきび抽出物を摂取することで、免疫機能が高まり病原体に対する防御力が高まったというマウスでの実験結果の報告があります。
さとうきび抽出物を飲んでいたマウスは病原体Salmonella Abortusequiに感染した時、肝臓組織の損傷が少なく、生存率も高かったことが報告されています。さとうきび抽出物の摂取によって免疫力が高まり、病原体に対する防御力が強まったことが示唆されました。
Motobu et al, Phytother. Res., 20,359-363(2006)
SDGsとの親和性
沖縄で昔から栽培され暮らしに根付いている、さとうきびと黒糖。生産や製造工程での環境負荷が少ないことから、SDGsやエシカル消費の推進に貢献する食材としても注目されています。
環境に優しい黒糖
1. 黒糖は加工度が最も低い砂糖
黒糖は、さとうきびのみを使用して作られた唯一の「無精製の砂糖」。島の中で製造を完結することで、輸送エネルギーを抑制しています。
2. 資源を循環しゴミを出さない製造工程
製造過程で出る、さとうきびの搾りかす(バガス)や灰、沈殿物を100%再利用しています。黒糖を煮詰めるボイラーの燃料や、さとうきびを育てる肥料などに使うことで、産業廃棄物の発生と重油の使用を抑えています。
3. CO2吸収能力の高いさとうきび栽培で温室効果ガスを削減
さとうきびは高温強光の環境下でも高い光合成力を発揮する「C4植物」として知られています。栽培することで、温室効果ガスを削減します。
沖縄の基幹作物「さとうきび」
1. 大切な地域産業として、人々の暮らしを守る
さとうきびは離島の基幹作物。栽培から製糖に関わる産業を維持することで、所得の安定につなげ、人口減少を防ぎます。
2. 農地を維持することで、土地をすこやかに保つ
台風に強く育てやすいさとうきび栽培によって農地を維持することで、食料自給率の低下や野生動物の被害、赤土の流出など、さまざまな問題の発生を予防します。
3. 製糖400年の歴史を伝承
1963年、儀間真常が中国から沖縄に製糖技術を持ち帰りました。以来、400年以上にわたり、さとうきびは沖縄の産業振興を支える存在です。