自慢のたい肥で2果取りに挑戦したい。
「玉元式循環型農業」でカボチャブランド化に貢献。
島のほぼ全域が国立公園という大自然の中で、カボチャを栽培して7年目。和牛繁殖業も営み、牛糞たい肥をカボチャ畑へ、カボチャは牛の飼料として活用するプチ循環型農業にも取り組む。今号は、「高品質カボチャの2果取りにチャレンジしたい」と笑顔で話すパワフルウーマンを紹介。
日本最南端の国立公園「西表島」
石垣港から出発するフェリーに揺られて40分。竹富島や小浜島を過ぎ、到着したのは竹富町最大の「西表島」。ほぼ全域が国立公園に指定されている、豊かな自然が残る島だ。
今回の取材先である島の東部、豊原地区に向かう道中、国の特別天然記念物のカンムリワシが取材陣を歓迎するかのように空を飛んでいた。
山裾にあるカボチャ畑で出迎えてくれたのは今号の農業人、玉元志帆さん(44歳)。背中にカボチャのイラストが描かれた真っ赤なつなぎに、ゴム長靴、両手にカボチャを抱えて満面の笑みで登場した。
「西表へオーリトーリ(ようこそ)。取り忘れたカボチャを収穫していたところなんです」
取り忘れと言うが、その立派なカボチャはさながら『緑のダイヤ』。実は、竹富町は、カボチャで県の拠点産地に認定されるほどの一大産地。品種は、ホクホク感と甘みが特徴の「こふき」。志帆さんも所属する西表島カボチャ生産部会によると、今期は90トンの生産見込みだ。
名付けて「玉元式循環型農業」
もともと夫の健さん(65歳)が始めたカボチャ栽培を引き継いで7年目。現在は70アール(2100坪)で生産している。
今では志帆さんがカボチャ(約6トン)、健さんは和牛繁殖(母牛60頭規模)と、分業体制でそれぞれの農業に取り組む。
一帯は砂質土壌で、カボチャ栽培には不向きだそうだが、玉元牧場からでる豊富な牛糞をたい肥化し、定植前の10月ごろに畑にすき込むことで大玉生産を実現している。
「実は、規格外や摘果したカボチャを牛たちに飼料として食べさせてます。その牛たちの糞をたい肥化し畑に還元する。名付けて『玉元式循環型農業』ですね。牛たちも好んで食べてくれます」
カボチャは、11月頃に播種。1ヶ月ほどで花が咲き、受粉後、着果して60~70日程度で収穫作業が始まる。肥培管理で大変なのは、芽欠き作業で、12月~1月頃は、朝から晩までこの作業に追われる。
「蔓一本にカボチャ一つ。脇芽を取ることで、栄養分を1果に集中させ、高品質のカボチャをつくる」
スクワット状態で行う大変な作業だが、大事なので手は抜かないのだそうだ。
島では「ユイマール」が基本
志帆さんは、ふぐのはえ縄漁の発祥の地とされる、山口県の粭島(すくもじま、今の周南市)の出身。20代で小浜島を訪れ、その自然に魅了された。それから西表島で健さんと出会い、結婚。3人の女の子の母であり、娘が所属するミニバスケのコーチも務める。
「夏場は、土づくりや牛舎の手伝いをしながら、プール監視やデイサービススタッフとしても働く。島はどこも人手が足りないので、皆で助けあいです」
逆に志帆さんが忙しい冬場は、芽欠き作業などのアルバイトを近所の主婦にお願いする。娘たちも、土日には出荷箱づくりを手伝ってくれるそうだ。
肥培管理のイロハも、部会の先輩たちから教えてもらった志帆さんは、「ユイマール精神」が根付く島への恩返しのために、カボチャ生産に励む。
目指すは「西表」ブランド定着
自慢の牛糞たい肥のおかげで、大玉化には成功したが、取れるサイズが大きすぎるため、2果取りすることで栄養を効率よく分散させ、主力の2Lにサイズを抑えることを模索している。
「私はすぐにでも挑戦したいんですけど、夫が『カボチャは1果取りだ』と譲らないんです(笑)」
西表島カボチャ生産部会の目下の目標は、ブランド定着化だ。その為には、高品質生産の維持が大切。月一回の現地検討会では、部会員全員で肥培管理技術を共有するが、生産量は現状維持が精いっぱいだという。
「来期からは絶対に2果取りに挑戦したい。生産量が増えることで、西表島カボチャの魅力を知る人が増える。でも、その前に夫の説得ですね」
つねに笑顔の志帆さんの、決意に満ちた瞳がキラリと輝いた。
先輩の声
西表島カボチャ生産部会
部会長
山城富正さん
月に一度の現地検討会に、いつも子どもたちを連れてきてくれ部会をにぎやかにしてくれます。島の生産量を今の倍に増やしたいので、志帆さんの若い力に期待しています。
JA担当者の声
八重山地区営農振興センター
農産部営農指導員
砂川秀作
部会の紅一点で人気者。若くてバイタリティー溢れ、いつも明るく、先輩たちにも可愛がられています。2果取りへのチャレンジを、私も精一杯応援します。
JAおきなわ広報誌:あじまぁ
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