成功も失敗も成功の糧にしていきたい。
拠点産地認定で気運が高まる宮古を盛り上げていく。
冬場のサヤインゲンと夏場のオクラと2本柱の経営だったが、これからはサヤインゲンに軸足を移して拠点産地としての品質向上・生産拡大を目指す。しかし、子どもと遊ぶ時間をつくり、家族の時間も大切にしたい。部会長として産地を盛り上げ、家族を愛する農業人を紹介。
宮古島のサヤインゲン
例年より暖かい日が続く2月下旬、宮古島に降り立った。農業が盛んな宮古島は冬春期を迎え、様々な農産物が出荷のピークを迎えていた。
宮古島市平良で、親の代からサヤインゲンを作っている今号の主人公・伊良皆雄作さん(37歳)のほ場は、宮古空港からほど近く、ビニールハウスとサトウキビ畑が混在している一角にあった。収穫をしていた雄作さんが作業を止めて、取材に快く応じてくれた。
雄作さんは父、哲夫さん(74歳)の後を継ぎ、今年で7年目を迎える。
「20代の時は別の仕事をしていましたが、親父が体調を崩したことがきっかけで跡を継ぐことを決意しました」
大きな身体で人懐っこそうな笑みを浮かべた。
1、2年放置されていたほ場を整備し、現在ビニールハウス7棟でサヤインゲンを、露地600坪(20アール)でオクラを栽培している。出荷量はどちらも3トン程度とのこと。
「今期のサヤインゲンは、ハウス7棟に10月初旬と11月中旬に種を播きました。年末から収穫が始まり、5月ごろまで出荷が続きます。その間、2月中旬には露地でオクラの種を播き、8月にも再度種を播いて年末まで出荷しています」
父の実践的な指導
就農して最初の2年は失敗続きだったそうだ。今は大先輩の父、哲夫さんの意見に耳を傾けつつ、JAの勉強会で得た知識もうまく取り入れて、自分なりの農業を確立しつつある。
「農家の息子なので、小さいときから身近で見ていて、ある程度はできるつもりでしたが、夏場のオクラを全滅させたりして、農業の大変さも楽しさも同時進行でした」
父、哲夫さんはなかなか厳しい指導者だった。サーベルという品種にトライしたときも、本来、苗に成長促進のためにジベレリン(植物ホルモンの一種)を2回処理するのが通常だが、雄作さんが知らずに育てているのを黙って見ていたのだという。
「普通ならビニールハウスの天井近くまで伸びるはずの苗が、膝あたりまでしかなく、かがんで収穫するため、1列の収穫に1日かかりました。『苦労して覚えろ』という感じでしたね」
今では笑い話である。現在、父から譲り受けたビニールハウスでは一般的なワンダーという品種を栽培している。平成26年度の沖縄県新規就農一貫支援事業で確保したパイプハウス3棟で関東地方で人気が高いサーベルにも取り組んでいる。
毎年、よりよい方法を模索していて、昨年は6列で植えていたが、今年は4列にしてみたとのこと。
「日当たりが良くなり、品質の向上と反収アップが見込めるんですよ」
笑顔で応える雄作さんから、サヤインゲンへの愛着が伝わる。
県の拠点産地に認定
現在、サヤインゲンを栽培しているJAおきなわ宮古地区野菜・果樹生産出荷協議会インゲン専門部会の農家は60人ほどで、雄作さんは部会長を務めている。若手と先輩たちとの仲立ちをする立場として、雄作さんに白羽の矢が当たった。
今年1月、沖縄県は宮古島市をサヤインゲンの拠点産地に認定した。認定数は県内6番目で、認定されるには、組織的な出荷態勢や生産規模などが評価されるが、それをクリアするために雄作さんを筆頭に部会全体で取り組んだ。宮古島市の平成29年度の生産量は93トンを記録している。
量だけではなく、宮古産のサヤインゲンは品評会でも高い評価を得ている。会場がある那覇に出品する際には
「ていねいに一本ずつ箱詰めした箱を、市職員が飛行機の機内でも常時ひざに抱えた状態で届けてくれました。(笑)みんなで協力し合うこと、これが宮古のいいところかなと思います」
生産体制は整った、後は頑張るだけ
現在、サヤインゲンとオクラを同規模で取り組んでいるが、
「今後は、夏のオクラを少しセーブして、サヤインゲンに重点を置いていきたいです。夏場はオクラの収穫ペースが速く、70代の父母と休みなく収穫しても3人ではとても追いつきません。夏場はせめて2週間に1日くらいは休んで、子どもと遊んであげたい」
懸命に取り組んできた7年を経過して、少し余裕の出てきた雄作さんである。
出荷先のJAでは、おおまかに振り分けて持っていけば、集出荷場で大きさや形、太さが選別され、箱詰めされる。
「父が現役だったころは、収穫してきたサヤインゲンを夜遅くまで家で選別し、箱詰めしていたものです。僕も親父の手伝いをしていましたが、(集出荷場の)おかげで農家はだいぶ楽になりましたよ」
行政とJAの後押しで、より高品質なサヤインゲンを作る体制が整った。あとは結果を残すべく雄作さんは一路邁進の覚悟で、サヤインゲンの増産に挑む。
JA担当者の声
宮古地区営農振興センター
農産部 与那覇 英人
真面目で、口数は少ないけれど、実行力のある方です。最初のころははらはらしながら見守っていましたが、頼れる部会長に成長しています。
JAおきなわ広報誌:あじまぁ
地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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