次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)今帰仁村・親川慎吾さん、志保さん

2019.01.01

次代をう 意気!域!業人

今帰仁村

親川 慎吾(おやかわ しんご)さん、志保(しほ)さん

 

変わらずに良いものを作り続けたい。

秀品率の向上で、経営の安定を目指す。

 

本格的に菊作りを始めて10年、父から受け継いだ農園を一回り大きくして、より良いものを作るために常に情報を収集し、チャレンジを怠らない。家族と両親への感謝の気持ちを忘れず、情熱と品質にこだわりを持つ農業人。

 

家族と従業員で日々の管理に取り組んでいます

輪菊の一大産地今帰仁村

 名護市から県道84号線、72号線のルートで今帰仁村へ入る。沿道の草木の緑が車道に迫る勢いで続き、やがて畑と集落が交互に現れ、今帰仁村のメインストリートに出る。

 自然豊かな村はスイカやマンゴーなどと共に菊類(小菊・輪菊)の拠点産地に認定されている。

 字与那嶺にある親川農園を訪ねた。親川慎吾さん(39歳)は菊農家の二代目で、父・長真さん(60歳)、母・智世子さん(59歳)、妻の志保さん(32歳)、従業員の正登さんの5人で輪菊を栽培している。

 ビニールハウスでは黄色のつぼみを付けた大輪の菊が、まっすぐに天を見上げ整列している。

 「撮影は収穫間際の菊を撮った方が良いと思うので、こちらにどうぞ」

 ほお髭を蓄えた慎吾さんが、よく通る声で気さくに取材に応じてくれた。

 

規模を拡大させても高品質な栽培には気を遣っている

 父から受け継いだほ場を拡大

 慎吾さんは本土で働いていたものの、13年前に帰ってきて、父・長真さんの菊栽培を手伝うようになった。

 「最初は月いくらともらっていたのですが、3、4年経ったころ、『この畑を任せるから、農薬代も肥料代も自分でまかなってやりなさい。その代わり入ってくるお金も自分のものだよ』と言われました。その頃から菊作りに対する意識が変わり、やりがいと責任を感じました。任せてくれた親父には感謝しています」

 帰って来てからいろいろ教わりはしたものの、数多くの失敗もした。収穫前に散布する薬剤の希釈倍率を間違えて、薬害で花が焼けてしまい、出荷できなくなってしまった。

 しかし、菊作りへの情熱は冷めることなく、始めたころは2000坪(66アール)だったほ場を4000坪(1.3ヘクタール)にまで広げた。その8割はビニールハウスで栽培している。12月から3月までコンスタントに出荷しているが、とりわけ正月用と春の彼岸用に照準を絞っており、12月中旬ともなれば出荷のピークを迎える。

 「土づくりが重要と考えています。植え付けの2か月ほど前から土を消毒して、苗を植えます。病害虫が出ないよう、消毒と施肥を天候や苗の様子を見ながら、注意深くおこないます」

 

JA担当者と生育過程を確認

菊作りに奮闘の日々

 現在扱っている種類は黄菊の精興光源という品種など3種で、慎吾さんは黄菊との「相性がいい」とのこと。輪菊は繊細で、病害虫などトラブルが起きやすく、それだけに栽培技術が問われるそうだ。年間出荷量は平均200〜250本の1500ケース。計算すると37万5000本に上る。

 大変な作業は、植え付けと摘雷だという。植え付けは、苗ひとつひとつを手作業で植える。1坪で70本を植え付けるというから、大変な労力となる。摘雷は消灯後、4週間あたりからいっせいに葉っぱの付け根から出てくる芽を掻く。1本につき20個くらいの芽が出てくるので、ある程度芽が出そろったところで、一気に作業をするそうだ。

 「やりがいを感じるのは収穫のときですね。きれいに揃った、てっぺんにつぼみを抱いた菊を見ていると気持ちがいい。良い物を作ると収入も増えますしね(笑)」

 ほ場では、ほとんどが手作業だが、各農家では選別作業に花ロボ(菊重量選別機)を導入している。ベルトコンベアに一本ずつ載せると、決まった長さにカットされ、自動的に重量選別をしてくれ、それぞれが10本集まると自動的に束ねられる。

 「選別作業にかける時間と労力が減り、菊農家はずいぶん楽になりました」

 春の彼岸が終わると、夏の間はゴーヤーを栽培し、収入源としている。ゴーヤーを終えると秋に備えて菊の土づくりを行う。

 「栽培時に一番怖いのが台風です。今年の台風の際は、防風ネットで対策をしっかりと行いました。ハウス施設があるからと慢心していたら、菊に曲りが出てしまい、品質の低下を招きます」

 台風対策や栽培方法は尊敬する先輩の菊農家やJA今帰仁支店花卉部会の若手同士の集まりなどで情報を収集しているそうだ。

 

子どもたちに菊づくりの楽しさを伝えています

家族の和から生まれる大輪の菊

 「菊作りは楽しい」と語る、妻・志保さん。末っ子はまだ1歳という4人の男の子の子育て真っ最中である。

 上の子ども達3人も土曜・日曜日の休みとなれば、慎吾さんの作業を手伝う。小さいながらも、3人寄ればその力は頼もしい。

 「子ども達には、後を継いでほしいとまでは言いませんが、菊作りの楽しさや素晴らしさはちゃんと伝えていきたい。将来、やる気となった時には栽培技術をきっちり教えますよ」

 子ども達のこと話す慎吾さんは、少し照れくさそうだが、しっかりした「お父さん」の背中を感じる。

 最後に今後の目標を聞いてみた。

 「規模はこれくらいで十分と思っているので、あとは秀品率を高めて、単価アップを目指したいです」

 親川農園の家族の和から生まれた大輪の黄菊は、その行く先々で観る者の心を和ませてくれることだろう。

 

ご両親の声

親川長真・智世子さん

若い頃は後を継がない、と言っていたんですが、菊作りの面白さがわかったようです。私達もまだまだ頑張れるので、家族でいい菊作りを目指します。

 

 

JA担当者の声

北部地区営農振興センター
 農産部花卉指導課 吉田 航

より良い品質の菊作りのために情報収集を怠らず、なにごとにも前向きに取り組む方です。将来、地域農業のリーダーとして活躍されると思います。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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