次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)大宜味村・松本政隆さん

2018.09.01

 

 

大宜味が好きで、人と人とのつながりを大切に。

村の「宝」、シークヮーサーで愛する故郷を盛り上げたい。

 

「青年農業者の会」を立ち上げ、地域の若い農業者どうしの助け合いの仕組みを作った。父から受け継いだシークヮーサー園は着実に成果をあげている。大宜味の宝「シークヮーサー」で村おこしを考える地元愛と思いやりにあふれる農業人を紹介。

 

青切りシークヮ―サー

ヤンバルの森に広がるシークヮーサー園

 名護の市街地を抜け、ヤンバル路を北上する。眼前に広がる海は格別の美しさだ。塩屋大橋の手前で右に折れる。塩屋湾の岸辺をなぞりながら、大保ダムを目指した。

 松本政隆さん(32歳)のシークヮーサー園は、大保ダムの少し上流にあった。辺りはイタジイの繁るヤンバルの森で、森に分け入るように一本すーっと伸びた砂利道の奥に園地があった。

 「初めまして。今日も暑いですね」

 農業青年というより青年実業家といった雰囲気の政隆さんからは、初対面ながら気さくで親しみやすさを感じる。

 

 

収穫作業にも余念がない

  人が好き。集まって何かがしたい

 「農業を始めて今年で6年目です。那覇でライブハウスを経営していましたが、結婚して、子どもが生まれたのを機に、子育ては自然豊かなところで、と出身地である大宜味村に戻ってきました。長男だし、いずれ帰らなければ、という思いもありました」

 現在、父・政尚さん(67歳)の開いた6000坪(約2ヘクタール)のシークヮーサー園を受け継ぎ、雇い人3~5人と共に、シークヮーサー園と養豚を手掛けている。

 「地元に帰ってきたら、若者がいないのでびっくりしました。生産者の高齢化で収穫がままならず、実をいっぱいにつけていたシークヮーサー園が、荒れ果ててゆくさまを見て、レスキュー隊として青年農業者の会を立ち上げました」

 青年農業者の会は20〜30代で構成され、現在20余名。収穫の追いつかない園地の作業を手伝い、困りごとがあれば何でも相談する。個人で活動するより、組織化した方が対外的に話しやすく、会員同士では農業に役立つ意見交換の場として機能している。

 また、若い生産者を大宜味村に定着させようと、移住者受け入れの取り組みも積極的におこなっている。

 「村も空き家などを提供し、バックアップしてくれています。自分は農業委員もしていて、耕作放棄地をやる気のある若い人に貸し出すという役割も担っています。人が好きなので、人が集まって何かできないか、といつも考えています」

 

シークヮーサー園の現在〜将来

品質の良いシークヮ―サーを栽培するため平張りハウスも導入

 

 中学時代は収穫期にたまに手伝っていたが、那覇にいる頃はめったに帰郷することもなく、ほぼ初心者の政隆さんだった。父・政尚さんの指導で腕

をあげ、最近では、園地の管理は政隆さんが担う。

 「父から教わったことは、木は横に広げるように誘引すること、樹間を4メートル空けることなどです。そうすることで枝が重ならず作業効率がよくなります。木は10年でも20年でも実をつけてくれますが、中には病害虫や台風で枯れてしまう木もあって、新たに植え付ける作業もあります」

 普段の作業はカメムシなどの病害虫駆除や除草、施肥がメイン。ヤンバルには鳥獣被害も多く、園地の周囲には、イノシシ除けの金網が張り巡らされていた。

 「収穫は3段階あって、刺身のあしらいなどに使われる青切り用が8月から9月の初旬まで、9月の後半から12月いっぱいは加工用として実が大きくなったものを収穫します。そして年明けから2月ごろまで黄色みを帯びて糖度が増した、「クガニ」と呼ばれる生食用のフルーツシークヮーサーを収穫します」

 出荷量は圧倒的に加工用が多く、年間20トンほどという。

 シークヮーサーは主に露地栽培がメインだが、収穫時期が台風の襲来時期と重なることから、台風に負けず、高品質な栽培が可能な平張りハウスも導入している。今後は、傷がないなど見た目も重視する青切り用の出荷量も徐々に増やす予定だ。

 

                     シークヮーサーで村おこし

JA営農指導員と生育を確認する松本さん

 「6月にJAの部会員として新宿で販売促進活動をしてきました。シークヮーサーという名前はすごく知られているのに、どんなものかよく知られていなかったですね。ブランドが一人歩きしているという印象でした」

 政隆さんは、産地のさらなるPRには若い人が帰ってこないと、限界集落になってしまうという危機感を募らせている。

 「シークヮーサーは、大宜味村の村おこしの核としてなくてはならないものであり、そのためにも、近い将来、観光農園として整備し、観光客だけでなく、若い人の職場体験の場としたい」と考えている。

 シークヮーサーだけでなく、赤土対策事業で蕎麦づくりが脚光を浴びれば、そのチャンスをフルに生かしたい、と常にアンテナを張り巡らしている政隆さん。「今、悩んでいることは何ですか」と聞いてみた。

 うーんとうなり、

 「悩みはありません。農業は自然が相手なので、悩みだらけと言えばそうなんですが、対策をとればよいことなので」

 「悩みはない」と言い切る政隆さん。その前向きな思考と熱き想いは、必ず大宜味の宝「シークヮーサー」の産地を盛り上げる大きな力となるに違いない。

 

 

 

JA担当者の声

北部地区営農振興センター
農産部野菜果実指導課 照屋 真作

明るく、まじめで、リーダーシップがあり、シークヮーサー生産農家の高齢化が進む中、若い世代をひっぱっていって欲しいと期待してます。彼の周りにはいつも人がいて、笑顔があります。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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