次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)糸満市・中村洋一さん

2018.01.01

作型の拡大で経営安定を図りたい。

台風被害にもめげず、着実に経験を重ねてきた8年間。

30歳までサラリーマンとして歩んでいたが、小菊に情熱を傾ける父の姿に「いつかはやらなきゃいけない」と思い続けていた。就農直後の台風被害で農業の厳しさを知るものの、8年間重ねてきた経験。今では日本一の産地で若手を束ねる。今年は「夏秋小菊」に挑戦したいと意気込む、期待の農業人を紹介。

 

サトウキビ畑に現れた菊畑群

電照菊は冬の風物詩だ

 JA糸満支店から、県道7号線を南下、南山グスクで右折し、沿道に慰霊塔の立つ農道を走る。サトウキビ畑の広がる道をしばらく走ったところで、糸満市糸洲地区に到着。集落の隣には、電照設備がほどこされたたくさんの菊畑群が見える。沖縄県は全国一の小菊の産地。その中でもここ糸満市は、県内一の生産量を誇る産地だ。その一角、整然とする小菊の中で、農薬の噴霧作業に集中する中村洋一さん(38歳)が手を止め、従業員に作業をバトンタッチ。取材に快く応じてくれた。

 

 

 

張り切っていた矢先の試練

大城指導員と生育状況の確認

 兵庫県出身の康行さんは、30代半ばまでエンジニアとして活躍。出張で全国各地を飛び回っていて、25歳で初めて宮古島を訪れた。
 「きれいな海に圧倒されましたね。仕事を終えると荷物を宅配便で送り返して、海に行ったりマンゴーを食べたり、当時の僕には楽園でしたね」
 それから康行さん、エンジニアの仕事も日に日にデスクワークが増え、毎日が窮屈に感じてきたのだという。
 「全国でも魅力的な場所はたくさんありました。でもやっぱり宮古島が忘れられなかったですね。海もそうですけど、初めて食べたマンゴーの味も忘れられなくて」
 宮古島の魅力に導かれた康行さん。初めて食べたマンゴーの味に惹かれ、『自分で作ってみたい』と一大決心。8年前に島への移住を決意した。
 「ベテランのマンゴー農家、辺土名忠志さんの下で2年間農業を学びました。マンゴーは木を植えてから収穫までに年数がかかるので、まずはトウガン栽培からスタートしようと思って」
 そして平成24年8月、意を決して50アールの土地とハウス3棟を購入。康行さんの農業が始まった。

 

「夏秋小菊」で作型を拡大

沖縄は全国一の出荷量を誇る

 台風の被害で出鼻をくじかれたが、それからは順調にこなしているという。
 「まだまだ勉強不足ですが、8年経ってやっと菊作りが分かってきたかな、という感じです」
 7月の終わり頃から定植し、約4か月で最初の出荷が始まる。苗を順次植え付けて、出荷は5月頃まで続く。品種は黄の「秋芳」、白の「みさき」で、両種で年間出荷本数は約70万本とのこと。そのほとんどが県外に出荷される。
 「小菊は自分に向いていると思ったので、小菊一筋でこれまできました。実は初めての試みですが、今年は夏場の出荷に向けて『夏秋小菊』に挑戦します」
 県内の小菊生産は、冬春期の菊類産地として、正月用や3月の彼岸期に向けた出荷をメインに取り組んでいる。全国的には6月頃に暖地産と高冷地産の切り替え時期を迎えることから、市場供給が不安定になるこの時期に出荷するのが狙い。
 「夏秋小菊は台風の襲来時期と重なるので、台風に耐えうる鉄骨製の平張ハウス施設に植え付けます。高温時期で作業は大変だと思いますが、頑張ります」
 就農8年目にして、新たな挑戦に意欲を見せる。作型の拡大で所得の安定が狙いだという。

 

一大産地で、担い手の中心的存在

われら菊づくりの仲間

 洋一さんは現在、約20人が在籍する糸満支店花卉生産部会若年部の部長を務めている。
 「部会は良いですよ。ベテランから若手までみんな一生懸命菊づくりに励んでいて、情報交換の機会が栽培にプラスになりますね」
 さすがは一大産地の糸満市といったところ。次代を担う後継者も増えつつあるという。
 出荷の傍ら、定植後の小菊の管理も欠かさない洋一さん。約2700坪の栽培面積は、とても一人では手が足りず、従業員を雇って営農体系を確立している。取材の合間もほ場への目配りは怠りなく、「ちょっといいですか」と断ると、従業員が散布を終えたところに走って行き、追加の散布液を作り始めた。
 「栽培規模の拡大とか、作業場を大きくするとか、たまに考えています。でも人手も確保する必要があるので、なかなか急にはね。じっくり考えていきます」
 一大産地の誇りを受け継ぎ、少しずつ、着実に経験を重ねる。洋一さんの作る小菊は、これからも清らかに咲き続けるに違いない。

 

 

 

JA担当者の声

南部地区
営農振興センター

大城 洋介

研究熱心で、農薬の調合や病害虫のことなど、何でも相談してくれます。私もその日のうちに正確な返事ができるように、日々勉強しています。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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