次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)糸満市・久保田隆之さん

2017.08.01

 

計画的に栽培し、経営の効率を上げたい。

アメリカで学び、両親に学び、自分でやってみたいと思った。

両親は専業農家で、自身は農業大学校に進学し、海外の農業研修を経験した。就農から12年目を迎え、次のステップはデータを活用した生産分析と、経営分析による効率的な農業経営。両親や姉夫婦と助け合って競い合い、時には子育てにも奮闘する、次代を担う二代目農業人を紹介。

 

「王家の野菜」モロヘイヤ

新芽の部分を収穫する

 梅雨明けの快晴が続く7月初旬、取材陣はJA糸満支店から県道7号線を南下し、待ち合わせ場所の糸満市南端、米須地区に到着した。車から降りると、辺りは南風に乗った潮の香りが漂い、目の前には頑丈な鉄骨製ビニールハウスが整然としていた。

 ハウスの中をうかがうと、人の背丈ほどのモロヘイヤが幾列も並び、暑さをものともせずに青々と茂っていた。

 「モロヘイヤ、あまり見たことないでしょ?」

 収穫の手を止めてやってきたのは、今号の農業人、久保田隆之さん(39歳)。隆之さんの収穫用カゴには、長さ40センチほどに切りそろえられたモロヘイヤが、ぎっしりと積み上げられていた。

 「王家の野菜」が語源のモロヘイヤは、ビタミンCやカロチン、カルシウムなどを豊富に含んだ栄養価の高い野菜。高温多湿の沖縄の気候が栽培に向いているそうだ。

 

家族は仲間でありライバル

収穫作業に大忙し

隆之さんは高校を卒業後、県立農業大学校への進学を決意。進学後に巡り合った、海外での農業研修のチャンスに飛びついた。    

「カリフォルニアに2年間いました。研修先の農場主は福岡出身の方で、アメリカ在住の日本人向けに野菜を供給していました」

 海外研修で農業の楽しさが一層増した隆之さん。沖縄に帰ると、すぐに両親の仕事を手伝い始めたそうだ。

 「両親と一緒にやっていると、農業の面白さにどんどん惹かれていきました。でもね、自分の畑じゃないから、自分のやりたいことの半分しかできなくて」

 楽しさと探究心が日ごとに増していく隆之さん。その時両親は「ほ場を分けてあげるから、自分でやってみろ」と背中を押してくれたそうだ。

 隆之さんは現在、55アール(1650坪)のビニールハウスで年間6トンのモロヘイヤを出荷する。所属する糸満支店蔬菜生産部会の中でも上位の生産量だ。 

 「親は大ベテランでまだまだ現役ですよ。しばらくは勝てませんね」

 年間9トン以上のモロヘイヤを出荷する両親は、常に隆之さんの前にいる。そう簡単には追いつかない両親の後ろ姿が、隆之さんのモチベーションを高揚させる。

 今では70代の両親と姉夫婦、隆之さん、経営も生計も別だが、それぞれが農業に熱を注いでいる。

 「みんな別々のほ場なんですけど、倉庫や作業場は共同で使っています。出荷前の箱詰め作業なんかは一緒にやりますよ。助け合い、競い合い、仲間でありライバルですね」

 農業が、久保田家の絆を深めていく。

 

品質、生産性アップに研究熱心

平安名指導員と生育状況の確認

 モロヘイヤは8月末頃から苗を植え付け、約1ヶ月後には収穫が始まる。新芽の部分を収穫し、約1週間後、再び生えてきた新芽を収穫する。

 通常は食することのないモロヘイヤの花は、咲いてしまうと一つひとつ摘まなければいけない。日照時間が短くなると開花が進むので、ハウスには電照設備が欠かせないそうだ。

  「モロヘイヤは縦に生育させるよりも、横に生育させたほうが収量は多いみたいです」

 そう話す隆之さんは今期、モロヘイヤの性質に着目した栽培に取り組んだ。縦に生育させると、目線に近い位置で作業ができるため、収穫や管理がしやすい。一方、横に生育させると、収穫や管理には手間がかかるが、縦に生育させるより収量が多いそうだ。

 作業の効率性か収量か、熱心な隆之さんが選択肢に悩む。

 

数字とデータを活かして効率化

実習生に熱心に農業を伝える

 隆之さんの奥さんは会社員として勤め、家を留守にすることもしばしば。そんな時隆之さんは、7歳と4歳の子どもの送り迎えや家事にも奮闘する。

 「大変ですけど、両親や姉夫婦にも助けられながら何とかです」

 農業への熱心な姿勢だけでなく、育児に奮闘する〝イクメン〟ぶりも垣間見せる。

 隆之さんは去年から、JAの経営分析診断や生産販売分析を活用し、決算書や営農指導のデータを基にした、計画的な栽培と経営の効率化に力を入れている。

 またベトナムから農業実習生も受け入れており、現在4人の実習生が隆之さんのハウスで汗を流している。

 「農業経営者」として挑戦し続ける隆之さんに、今後の期待を込めて意気込みを聞いてみた。

 「効率よく販売額を伸ばしていきたいですね。いつ頃植えて、いつ頃出荷すればいいのか、過去の市場の動きも参考にしながら、価格の高い時期を狙っていきます」

 隆之さんのにこやかな笑顔がキリっと引き締まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

JA担当者の声

南部地区営農振興センター

平安名 修司 

真面目な方で、向上心にあふれています。いち早く外国人実習生を受け入れ、経営分析にも積極的で、一緒に勉強しようという姿勢でリーダーシップを発揮しています。

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

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