次代を担う 意気!域!農業人(はるんちゅ)

2017.02.01

毎日食べる野菜だから意地でも出し続ける。

周年出荷、安定供給が客をつかむ。

東日本大震災を機に、農業の道へ。軽石「パミスサンド」と自家配合の液肥を活用した計画栽培で、葉野菜を中心に周年出荷を実現。子ども好きな一面から、地域の食育活動にも熱心だ。今号は、計画的な販売戦略を立て生産に励む若き農業人を紹介。

 

まるで野菜の生産工場

農業用軽石「パミスサンド」

 

 暮れも押し迫り、沖縄市のファーマーズマーケット「ちゃんぷる~市場」は正月用の食材を買い求める人で賑わいを見せていた。

 ここに毎日葉野菜を出荷している仲宗根工さん(33歳)のハウスはここから車で10分ほど、ビニールハウスや電照菊畑の続く農道沿いにある。

 「葉野菜ばっかりでしょ(笑)。ここが『うりずんファーム』です」

 代表の工さんが案内するハウス内(60アール)には、腰の高さの発砲スチロールベッドが整然と並び、いろんな種類の葉野菜が青々と茂っている。

 うち20アールで生産するのは、フリルレタスやサラダナ、サントウサイ、ハンダマなど、葉野菜を中心に8種ほど。

 土の代わりに農業用軽石「パミスサンド」を敷き、液肥を活用する栽培方法で、排水性が良く管理がしやすいことを利点に、計画生産しファーマーズへ毎日出荷している。

 ハウス内は土が少ない環境のせいか、土特有の香りもなく、まるで大きな野菜の生産工場にいるようだ。

 

年中出荷することが大事

パミスサンドの培地に残る根をきれいに取り除く

 「うりずんファーム」のファーマーズへの出荷点数は、昨年は10万点にも上り、今年は更に出荷数が伸びる見込みだ。

 朝5時にはヘッドライトをつけて収穫開始。その後、袋詰め作業を行い、11時ごろまでにはファーマーズへ出荷。従業員4人と力を合わせ、安定供給している。

 「毎日あると分かれば絶対にお客さんがつく。飲食店もメニュー化が可能になり需要も安定する。たまに市場に葉野菜を並べる時、『きみが”うりずんファーム“か!』と言われると正直うれしい」

 工さんが安定出荷する大切さを教えてくれた。

 葉野菜が少ない沖縄の夏場も、フリルレタスやハンダマなどを出荷。夏は、あまりの暑さに発芽しないことから発芽促進のため苗床にクーラーを入れる徹底ぶりだ。

 昨年10月に起きた品薄による葉野菜の価格高騰の際も”いつものお客さんにいつもの値段で“ という気持ちで通常値段で出し続けた。

 

「はるこん」がきっかけで結婚

 工さんは以前、海洋土木員として全国の港湾内で大規模な公共工事に関わっていた。

 沖縄の海員学校や兵庫県の海技大学校まで通い、順調に海の仕事をこなしていた工さんに転機が訪れたのが、平成23年の東日本大震災だ。

 ”いずれは沖縄に戻りたい“ と思っていた工さん。震災を機に、沖縄で観葉植物を栽培していた父正一さん(61歳)に誘われたのが農業のきっかけだった。

 しかし平成24年に、立て続けに台風が襲来、ハウスのビニールが半分ほど飛ばされたが、その時にもう後戻りできないと腹を括ったのだそうだ。

 しかし、その年には良いこともあった。

 美里支店青壮年部が企画した農業青年との出会いイベント「はるこん」で第一号カップルになり、現在は1歳になる長男と奥さんの3人家族。後輩たちにも幸せな縁ができるよう、今後も開催に関わっていきたいそうだ。

 農作業を体験できる「はるこん」は青壮年部の名物イベントとなり、今までに8組のカップルが誕生、うち2組が結婚にまで至っている。

 

地域をつなぐ食育活動

周年祭などで企画している「農家さんの畑ツアー」

 子どもの話をすると顔がほころぶ工さんは、地域の子どもたちへの食育活動にも積極的だ。

 実は、この日の午前中も近隣保育園を対象とした収穫体験を実施してきたところだそうで、バントラックにはカゴいっぱいにニンジンやタマネギがどっさり積まれていた。

 また、農家の応援団となってもらうべく、ちゃんぷる~市場周年祭などでは「農家さんの畑ツアー」を企画し、苗植え付けや収穫を体験させるなど、農業について楽しく学べる場所づくりにも取り組んでいる。

 「生産過程を知ることで、もっと地元野菜に愛情を持ってもらえるのでは」

 そう期待を込める工さんに、農業のやりがいを聞いた。

 「ファーマーズ出荷の魅力は金額設定から包装まで自分で行えること。儲けも赤字も自分次第ということですね。赤字の時もありますが、ちゃんと楽しく経営できていますよ(笑)」

 自信に満ちた工さんの笑い声がハウス内に響き渡った。

 

JA担当者の声

中部地区営農振興センター
農産部 野菜果実指導課
丸橋 ももこ

農業が大好きで子どもが大好き。一言で言うと熱い方です。計画的な農業をしており、JAに対しても熱心にいろんな情報を問い合わせて、日々の農業に取り組んでいます。

 

 

 

 

JAおきなわ広報誌:あじまぁ

地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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