冬場のゴーヤーの美味しさを伝えたい。
二人三脚で取り組むこだわりのゴーヤー栽培。
母と妻が始めた農業だったが、自然が相手で簡単なものではなかった。「放っておけない」と男気を見せ、自らも未知のジャンルに飛び込み、今では妻と二人三脚でゴーヤー作りに励む。今号は、冬場のゴーヤー産地「宮古島」の夫婦農業人を紹介。
宮古ならでは「冬穫りゴーヤー」
農業の島「宮古島」は、サトウキビ収穫真っ盛り。宮古空港から取材先に向かう沿道のあちらこちらで収穫機「ハーベスター」がうなりを上げている。空港線を城辺向けに行くと、ほどなくして海の見えるビニールハウス群に到着した。
「いやー、今日の収穫はちょうど今終わったところです」
元気な声で出迎えてくれたのは、今号の農業人、長尾浩司さん(41歳)と奥様の喜良美さん。さっそくきれいに並べられた出荷前のゴーヤーを見せてくれた。
「珍しいでしょう。宮古島は今がゴーヤーの旬なんです」
そう話す通り、ビニールハウスには鈴なりにゴーヤーが実っている。ハウス内に良い香りが漂うのは、周りにレモングラスを植えているからだそう。
宮古島では、台風シーズンを避け、11月後半から翌6月まで出荷するスタイルが主流。2~3月をピークに、生産量は今期920トンの見込み。県外出荷をメインに、この時期はJA宮古地区農産物集出荷場もゴーヤー選別のためフル稼働する。
「男気」で就農を決意
もともと、母のかよ子さんと喜良美さんが4棟のハウスから農業を始めた。
「休日には手伝っていたのですが、二人を見るといつも忙しそうで。作業が追い付いていないことは分かっていましたから、男である私が放ってはおけません」
そうして喜良美さんに1年遅れて農業を始めた浩司さんだったが、予想通り苦難の道が待っていた。
「最初の3年間はとても苦労しました。土づくりから病害虫防除、肥培管理までまさに手探り状態でしたね」
と二人声を揃え、当時を振り返る。
先輩農家やJA、普及所など周りの手助けもあり、年々ゴーヤー栽培の腕を着実に上げてきた。今では農業歴12年の長尾さん夫妻のこだわりは土づくりで、植え付け前の夏場は5~6回ほど畑を耕す。緑肥「ソルゴー」を植えるのも熱消毒も、丈夫な土をつくるには大事なのだそうだ。
今では、浩司さんは若手にも土づくりを指導している。
「土づくりは農業の基本。施肥のタイミングもアドバイスする。それが宮古地区全体の出荷増につながれば」
と自身が就農当初苦労しただけに、若手への指導にも熱が入る。
二人三脚だからできる農業
当初4棟だったハウスも今では10棟(22.5アール)に拡大し、昨年の出荷量は約20トンに上った。栽培するのは、寒さに強い「汐風(しおかぜ)」という品種で、ゴーヤーならではの立派なイボイボが特徴だ。
収穫にはじまり、出荷、受粉、摘葉作業と長尾さん夫妻の午前中は忙しい。
「涼しい時間帯に収穫することで元気なゴーヤーを出荷します。受粉作業も大事で、収穫の際に気付かなかった葉や幹の様子を確認することで、早めの病害虫防除につなげています。一本ずつ株元への液肥やりも欠かしません」
一つひとつの工程を、時間をかけて丁寧に行う。これは夫婦二人三脚だからできるという。日課の二人そろっての昼食時には、今後の作業内容を話し合うそうだ。
地域に感謝し地域を盛り上げる
昨年の7月からゴーヤー専門部会城辺支部長を務める浩司さん。各地区の役員が集まる現地検討会では、互いに技術共有し、スキルアップに努めている。
技術は支部員とも共有。若手のみならず、ゴーヤーを初めて栽培する農家の営農相談にも積極的に乗るそうだ。
長尾さん夫妻は、安全・安心も心掛けている。農薬散布の方法や量をきちんと守り、生でも安心して食べられるゴーヤーづくりをしている。
「冬場のゴーヤーも美味しい。サラダで食べるのもおススメですね」
そう笑顔で言い切る浩司さんが、目指していることを話してくれた。
「ゴーヤーを極めたい。最高品質のゴーヤーを作りながら単収もアップ。二人なら間違いなくできる。そう思って頑張ります」
その頼もしい発言に、喜良美さんも笑顔でうなずいた。
JA担当者の声
宮古地区営農振興センター
農産部 営農指導員
砂川涼太
長尾さん夫妻は、ゴーヤーに関しては妥協はしません。浩司さんはゴーヤー専門部会の城辺支部長として、会合では積極的に発言し、ムードメーカーとして活躍されています。
JAおきなわ広報誌:あじまぁ
地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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