この美味しさは食べてみないと分からない。
ブランド確立に向け、パインの栽培北限で生産に奮闘。
10代のころから憧れていた農業に取り組んで17年、パインアップル生産を始めて7年。新規就農というゼロからのスタートを皮切りに、今では若手の相談相手にもなる。今号は、魅力ある作目としてパインアップルのブランド確立を目指す、熱血農業人を紹介。
親子二人三脚でパインアップルを生産
名護バイパスを抜けて北上、屋我地大橋を渡り、羽地内海に面した海岸線から内陸部に行くと、広々としたパインアップル農場に着いた。
赤土の「国頭マージ」が広がる農場には、パイプハウスが並び、露地畑が広がる。
「こんなに大勢で来たのか。あっはっは」
満面の笑みで迎えてくれたのは今号の農業人、藤原邦彦さん(47歳)。日に焼けた肌とハリのある声が特徴だ。優しい笑顔が印象的な母悦子さん(73歳)も一緒に出迎えてくれた。
自然が大好きで、学生時代から農業に興味があった邦彦さんが、母悦子さんと農業を始めたのが17年前。当初は会社勤めの傍ら、葉野菜を栽培していたが、地元特産パインアップル産業の低迷に危機感を抱き、7年前に脱サラし、パインアップル栽培の道へと進んだ。
「せっかく農業するなら、特産パインアップルをたくさん作って産業の復興・発展に貢献したかったんですね」
地元をこよなく愛する邦彦さん。母悦子さんと親子二人三脚でパインアップル作りに情熱を傾ける。
家族もパインアップルの大ファン
現在、ハウス6棟20アール(約600坪)では、生食用のN67-10(ハワイ種)という品種を、露地畑2ヘクタール(約6000坪)では、生食用のボゴール種(通称:スナックパイン)や加工・生食用としてハワイ種を栽培している。
ハウスものハワイ種は5、6月に出荷し、その後露地ボゴールが7月いっぱいまで。8月から11月頃までは加工用を出荷するなど、収穫期が重ならないように、仕事量を分散している。今期は、生食用で8トン、加工用で20トン出荷予定だ。
果実の日焼け防止や鳥獣対策用のネット掛けなど体力のいる作業は邦彦さんが担当。母悦子さんは草取りなどの作業を手伝う。今はハウスパインの収穫を目前に控え、熟度に直接影響する水管理にはとりわけ気を遣う。
「作業は大変だけど、収穫がとても楽しみ。わが子みたいにかわいいよ」
植え付けから収穫まで2年かかるとあって、嬉しそうな邦彦さん。
「子どもたちも収穫は喜んで手伝ってくれる。味見を楽しみにしながらね(笑)」
妻めぐみさんや5人の子どもたちも、父の育てるパインアップルの大ファンだ。
唯一の国産パインアップル
沖縄県にパインアップルが伝わったのは、150年も前のこと。栽培条件として、”一年通して暖かいこと“、”土の性質が酸性であること“、”水はけが良いこと“ の3つが必要で、県内でも、酸性土壌が分布する北部や八重山地方の限られた土地でしか育たない貴重な果実だ。
本土市場では、県産パインは唯一の国産として高く評価されているそうだが、目下の課題は県内での認知度向上。
「県内ではお盆の飾りもののイメージが強いが、あれは主に外国産。沖縄の人にも、とても美味しくてリーズナブルな価格、沖縄の農家が丹精込めて作った旬の県産パインアップルをぜひ味わって欲しい」
と生産拡大に意欲を燃やす。
パインアップルで地域を元気に
JA北部地区パインアップル生産部会には215人が所属。うち88人が生食用パインアップルの生産に励んでいる。
平成27年1月には、生食用のブランド化に向けて「生果専門班」を設置。邦彦さんをはじめ、部会の選抜メンバー6人が役員となり、栽培技術の向上や優良品種の導入、販売体制の強化に取り組んでいる。
「目標は生食用と加工用の出荷量をそれぞれ20トン以上まで拡大すること。ハウス用の新品種も導入して沖縄独自のブランドパインも作りたいですね」
パインアップルのことを語り出したら止まらない邦彦さんが、熱い口調で続ける。
「若い世代にもどんどんパインアップル栽培に挑戦してもらいたい。私が相談に乗りますよ。なにしろ新規就農の苦労は経験済みですからね」
パインアップル農家が増え、収穫量も増え、地域が元気になることを夢見る、邦彦さんであった。
母親の声
藤原悦子さん
息子は土日も休みません。本当に農業が好きなのだと思います。これからもできる限り応援したいです。
JA担当者の声
北部地区営農振興センター
パイン対策部
森山勝
パインアップル作りだけでなく、経営に関しても前向きで、将来を見据えた農業を実践している。後に続く人たちの目標になってほしい。
JAおきなわ広報誌:あじまぁ
地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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