ブランド力を高めて周年出荷を目指す。
日本一の産地に向け、今年から本格的に夏秋小菊に挑む。
沖縄県では冬春期の菊類出荷が主流。中でも小菊は日本一の生産量を誇る。そこにお盆や秋のお彼岸を見越した「夏秋小菊」を作れば、周年出荷への足掛かりとなる。そこで始まったのが夏秋小菊への挑戦だった。今号はブランド化に向け、質にこだわった生産に取り組む農業人を紹介。
鉄骨ハウスに季節外れの小菊
読谷村の中央部に位置する読谷補助飛行場跡地には、転用基本計画の一環として先進農業支援センターが整備され、鉄骨製のビニールハウスや平張施設などが広大な敷地に並んでいる。
お盆を控えた8月初旬。取材陣が立派な鉄骨ハウスの一角で待っていると、今号の農業人、上地一樹さん(37歳)が営農トラックで到着し、早速ハウス内を案内してくれた。
「夏のこの時期の小菊って珍しいでしょう。このハウスだからできる芸当ですね。台風が来てもびくともしませんよ」
出荷前の小菊が一面に並ぶ光景をバックに、自信に満ちた表情で一樹さんがこたえる。
沖縄では、正月用や春のお彼岸など、冬春期の小菊生産が主流。
そんな中、台風シーズンと重なる夏から秋にかけて生産する「夏秋小菊」に挑戦することに至った経緯を一樹さんが話してくれた。
ブランド化に向け夏秋小菊に挑戦
一樹さんが所属する読谷支店園芸生産部会花卉部で、夏秋小菊生産が始まったのが3年前。”台風災害に耐えうる“という鉄骨ハウスの特性を活かし、同センター内で小菊を生産する部会員6人が、周年出荷によるブランド化も視野に入れ、生産に取り組んだ。
「沖縄の気候に合った品種をあれこれ試したおかげで、だいぶ品種選定できましたね」
と笑顔の一樹さん。3年目の今年、満を持して計画生産・計画販売に取り組んだのだ。
まず、配色バランスを均一にするため、黄・赤・白の3種類にそれぞれ2人、15アール(450坪)ずつ植え付け。県外のお盆時期に向け、4月の植え付けから6月初旬の電照消灯など、タイミングや生育状況などを定期的に話し合ってきた。
生産した小菊は、全量を県外の取引市場へ販売する予定。この時期、他県では「季咲き」での栽培が主流で、天候によって出荷がずれることもあるそうだが、その点、沖縄の電照栽培は出荷期が調整できるという強みを生かし、需要期に向けた計画生産で、ピンポイント出荷を行う。
「『台風が来なかったらラッキー』という感覚では農業はできません。その点私は栽培環境に恵まれています」
夢は小菊の周年出荷と話す一樹さん。なんでも相談できる仲間や頑丈なハウスに対する信頼は厚い。
農業との関わり
そもそも、一樹さんが小菊と出会ったのは中学2年生のころ。父芳樹さん(62歳)が小菊生産を始めたことがきっかけだった。
その後20歳で上京し、10年ほどいろんな職種を経験した後、平成23年の震災を機に帰郷。沖縄で悠里さんと出会い、結婚した。
「そろそろ地に足を付けて働きたいと思っていた時、農業してみたら意外に楽しかったんです」
学生時代は、農業の手伝いが嫌だったという一樹さん。しかし小菊生産のノウハウはその時に培っていたため、本格的に父に弟子入りした後は日々農業に取り組み、技術を習得。4年前に独立した。
「一家の大黒柱として、自分の責任で小菊に取り組みたかった」
長女、長男も生まれ、ますます気合が入っている。
質にこだわる小菊生産
昨年から264アール(8000坪)の小菊生産に取り組んだ一樹さん。手が回らず、冬春期の小菊出荷では、品質面で納得のいく結果ではなかったそうだ。
「量も大事だが、質でもっと勝負したい。量は力・質は信頼ということですね」
夏場の産地化も目指し、いずれは「周年出荷」というチャレンジ精神にあふれる一樹さん。妻悠里さんも、経理面などから支えてくれるそうだ。
「農業は手をかけただけ質という点で返してくれる。だからこそ手を抜きたくない。家族と共に夢を追いかけたいですね」
ワイルドな一樹さんの瞳はまぶしいくらいに輝いていた。
JA担当者の声
中部地区営農振興センター
農産部花卉指導課
伊波裕
小菊の栽培について徹底的に勉強し、突きつめ実行し、チャレンジを惜しみません。生産者として高い意思があり、リーダーシップでみんなを引っぱっています。
JAおきなわ広報誌:あじまぁ
地域で頑張る農家を紹介する「農業人(はるんちゅ)」はあじまぁに掲載されています。
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